★三重県上野森林公園 「ネイチャリング・カフェ : タヌキと里山と生物多様性」 2/26
植物観察で年に数回は散策に出掛けている三重県上野森林公園。
平成11年に開園した県営施設で、里山を整備した自然公園です。面積:約43万7千平方メートルと云われる広大な公園で、落葉樹林を主体とした園内には、池や湿地が点在し、色々な草木が生え、動物や野鳥や昆虫が生息しています。冬季は花も殆どなく、私も訪れることが少ないのですが、たまたまホームページを見ていたら、標記の行事があるとのことで、面白そうなので参加しました。
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当日の案内パンフレットです。今回のスピーカー(先生)は三重県庁・農林水産部・野生生物班主査の樋口氏です。昔から身近なタヌキですが、本格的な研究は意外と少なくて、当時、先生が書かれた論文も日本ではまだ3番目だったそうです。
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当日は朝10時から12時まで、森林公園ビジターコテージ研修室 で、特製の沖縄産のお茶をいただきながら、対談形式を織り交ぜて、先生の話をお聴きしました。テーマは大別して3つ、①タヌキ、②里地里山、③生物多様性でした。結構難しい話もありましたが、タヌキについて印象に残ったことを少し記しておきます。タヌキは極東にのみ生存しており世界的には珍しい動物で、日本にいるタヌキはホンドタヌキ(本土狸)と呼ばれます。英名は roccoon dog (アライグマのような犬)です。タヌキは年中行動していて、季節によって食性が違い、多種多様な物を食べている雑食性です。活発な行動時間は日没後数時間と、夜明け前後で、雨や曇天の日は余り行動しません。明るい夜(月夜)が好きで、月夜で繰り広げられる「狸囃子(たぬきばやし)」の話は当を得ているようです。狸のロードキル(車に轢かれて死ぬ)時間もこの時間帯に集中しています。
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タヌキの外観は、目の周りが黒く、手足も黒い毛です。
昔から「ムジナ」と呼ばれているのはタヌキかアナグマです。地方によっては、タヌキをムジナと呼んだり、逆にアナグマをムジナと呼んだりして、未だに混同されています。タヌキはイヌ科、アナグマはイタチ科と、科は違うのですが、姿や習性は良く似ていて、「同じ穴のムジナ」の言葉通り、同じ穴に住んでいることもあるそうです。タヌキで作ったタヌキ汁は臭くて不味いです(雑食性だから臭いがきつい)。もし美味しかったと云う人がいれば、それはアナグマだった可能性が高いそうです。アナグマは美味しいそうです。タヌキは雑食性ですが基本的には食肉目なので、植物性食物はあまり消化できないため、量を沢山食べないと栄養が取れません。南洋のジャコウネコも食肉目なので、コーヒーの実を沢山食べても、消化されずにウンチとなって豆は排泄されます。この排泄豆から作るコーヒーが世界で最も希少で最高級品の「ジャコウネコ・コーヒー(コピ・ルアク)」ですが、「ウンチ・コーヒー」と揶揄されることもあります、等々。
12時15分、講義は終了し、先生から「今日はタヌキを連れてきて、前もって林の中に放してあるので、これから探しに行きましょう」ということで、全員室外に出ました。
★フィールドサイン観察会
いよいよ、お待ち兼ねの「タヌキ探し」に出発です。
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電波を利用した動物の行動域調査 を体験します。最初に、タヌキを探しに行く前準備について説明を聞きました。必要なのはアンテナと受信機、コンパスに地図です。もう一つ必要なテレメトリ発信機ですが、これは追跡対象の動物(タヌキ)に既に取り付けられていて、ここにはありません。
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動物追跡用のアンテナと携帯型受信機を接続します。受信機の数値の下に電波の強弱状態がバー表示されます。一番バーが長くなった方向が発信機を付けているタヌキのいる方向です。全員が交互に追跡用のアンテナと受信機を持って、操作方法を学びました。
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まず、A地点から、アンテナを高く上げて、ゆっくり回しながら電波の強い方向を確認します。
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次にB地点へ移動し、ここからもアンテナを回して、電波の強い方向を探します。
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A地点から捉えた電波の方向をコンパスで確認し、地図上に方向線を書き込みます。次にB地点から捉えた電波の方向を地図に書き込みます。その2つの線が交わっている所(☆印)が追跡対象物(タヌキ)がいる現在地です。
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さっそくアンテナで方向を確認しながら林に向かいます。
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先生から「柔らかい土の道は動物たちの足跡が残りやすい所なので、しっかり探しましょう」との声が‥
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土の上に残されていた動物の足跡。これは私も分かります。シカ(鹿)の足跡 です。ちなみに鹿はどちらに向かっているでしょうか?先が細く尖がっている方が進行方向です。写真では上の方向に向かっています。
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あっ!ありました。これは紛れもなく タヌキの足跡 ですね。
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このあたりで、受信機のバーは最高の長さになっています。地図からもこの周辺にいるはずです。
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見つけました!林の中からタヌキを連れ出します。
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私たちが発見し、捕まえたタヌキは練習用の木工品でした(せめて檻に入った本物だったら良かったのですが)。背中にテレメトリ発信機(アニマル・マーカー)が取り付けられていました。この発信機から出される電波を私たちは追跡していたのです。TVの動物放送では、よく見かける光景ですが、実際に自分たちが操作して追跡できたのは貴重な体験でした。先生たちはこのようにして、長期間に渡って動物の行動範囲を掌握し、その生態を観察しておられるのです。
ここで本日の会も終了となり、現地解散となりました。短い時間でしたが、大人も子供も夢中になれた、楽しい時間でした。