地蔵講、地蔵会、地蔵盆は各々微妙に意味が違うのですが、特に関西を中心にして行われている宗教行事で、名前の通り、お地蔵さまを供養する法要です。奈良町界隈では、毎年7月23・24日を中心に行なわれています。有名なのは、元興寺・伝香寺・福地院・十輪院・西光寺などで行われるもので、この伝統行事を一目見ようと観光客も大勢押し寄せます。
他方、Wikipediaによりますと、”
地蔵盆(じぞうぼん)は、地蔵菩薩の縁日で、厳密には毎月24日であるが、一般的には、その中で特にお盆にも近い旧暦7月24日のものをいう。ただし、寺院に祀られている地蔵ではなく、道祖神信仰と結びついた「路傍や街角のお地蔵さん」いわゆる「辻地蔵」が対象となっている
。期間としては、当日の前日の宵縁日(旧暦7月23日)を中心とした3日間を指す。縁日(祭り)はその期間内の特定の日を選んで行われる”とあります。今回の企画はWikiが云う地蔵盆の趣旨に近く、主として街角の辻地蔵を訪ね歩き、あわせて辻地蔵以外にも奈良町の庶民の信仰対象となっている所にも立ち寄りました。
★なら・観光ボランティアガイドの会 「もっと知りたい 奈良町の信仰」 7/23
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当日は近鉄・奈良駅地上部にある行基像前にて午前9時から9時30分の間に受付。この会は事前予約制で、到着受付順に10名毎に班となり、10名集まれば順次スタートしていきます。私たちは4班となり、9時15分過ぎにスタートしました。
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東向商店街を通り抜け、猿沢池へと出てきます。池の南側を流れる率川(いさがわ)の‥
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嘉橋(しまかばし)の下の舟形中洲に集められた、
率川地蔵 と呼ばれる地蔵群です。明治の廃仏稀釈の時に川に捨てられた石仏を、のちに拾い集めて祀られました。川の水も干上がっていて、見るだけでも暑さが倍増してきます。
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上ツ道(上街道)を南下し、猿田彦神社(道祖神)に立ち寄りました。
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神社の参道左手の注連縄を架けられた岩が、道祖神で
賽(さい)の神 と呼ばれ、博打などの勝負事の神様なんだそうです。昔この神様は近所の御霊様と博打をして見事に負けてしまいました。それなのに勝負の神様になってしまいました。曰く 「自分が味わった悔しい思いを人々にはさせたくない」と、賭け事の守護を買って出たのだそうです。「この神様に祈っておくと博打に勝てますよ」との説明で、今朝家を出る前にNETで中央競馬の馬券を少し買っていたので、祈っておきました。帰宅後の結果は、買った馬は各々2・3・4・5着で、1着馬は居ませんでした。やはり勝負には弱い神様だったのか、私の予想が甘かったのか‥。
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元興寺塔跡(元興寺観音堂)や元興寺極楽堂などの有名な寺院も地蔵盆でしたが、今日は見学しません。
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奈良町資料館すぐ近くの角にある 中新屋町地蔵堂 です。今日はどの町内の地蔵もお供えなどで綺麗に飾られていて、奈良町に住む人々の信仰心の篤さを感じます。
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川之上町地蔵堂 と、そこに祀られている江戸時代制作の 延命地蔵
菩薩半跏像 です。左手に宝珠、右手に錫丈を持ち、左足を踏み下げる地蔵半跏像は、ガイドさんがお持ちの資料から写真を撮らせてもらいました。
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紀寺交差点南西角にある 早和良(さわら)地蔵。西方にある祟道天皇社(早良親王の
諡号)との関係で祀られていると考えられています。親王に対する畏れが根強かったことが伺えます。
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途中の町内各地の街角で見られた数々の地蔵堂。公道上に祀られた祠(ほこら)だけでなく、民有地内にも祠が道路に向って建てられています。各町内ごとに地蔵信仰が強かったことが伺えます。
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椚(くぬぎ)神社。道路上にある小さな神社です。古代の官道、上ツ道の奈良町の南玄関口でした。
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椚神社を少し南に行ったところにある、上ツ道南玄関口であることを示す石燈籠の 常夜燈 です。左奥にも小さな祠が祀られています。
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10時45分、JR京終(きょうばて)駅に到着、水分補給とトイレのために小休止です。鉄道マニアにとっては難読駅名として有名です。次の駅名も帯解(おびとけ)駅で、万葉まほろば線は
難読駅名が多いです。
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飛鳥神社などを経て、京終地蔵院 に到着です。堂の手前、道路側に 阿弥陀三尊石仏 が祀られています。一つの光背の中に、中央に阿弥陀如来、向って右に観音菩薩、左に勢至菩薩が彫られています。南北朝時代の作と推定されます。
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上ツ道の道路角にある地蔵。古代より交通の要衝にあり、現在に至るまで、交通安全地蔵 として祀られて来ました。
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大聖歓喜天堂
大聖歓喜天は秘仏中の秘仏なので見ることは出来ません。お堂の左手には、江戸時代の庶民信仰の高まりによる、霊峰富士山や大峰山に参拝した富士講や大峰山上講の石碑が建てられています。
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元興寺小塔跡の南手にある、小党院南地蔵堂。内部には地蔵石仏2体、十一面観音立像、役の行者像などが祀られていました。
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最後の訪問地、奈良市史料保存館 に入館。クーラーの良く効いた展示室で、館の説明者さんから、奈良町の各種信仰についてお話を聴きました。12時丁度、ここで解散となり、近鉄奈良駅を経由して鴻池運動公園まで歩いてゴールとしました。本日の歩程 9.9km でした。普段は殆ど目を向けることもない路傍や街角の地蔵や石仏ですが、この日(地蔵盆)は町内の人たちから綺麗にしてもらい、庶民信仰は今も地域に根付いていることを実感しました。