大阪の山友達であるHさんから「久しぶりに山へ行きませんか。一時は姿を消した ムサシアブミも復活して元気な姿が見られます」と連絡があり、野生のムサシアブミをまだ見たことがなかった私は二つ返事でOKし、待ち合わせて某山地へ行きました。今回は、その山歩きで出会った春の山野草たちです。
musasi_abumi01
ムサシアブミ(武蔵鐙)。サトイモ科テンナンショウ属の多年草。関東以西の山地に生えます。花期は3-5月で、地面から立ち上がる第1の葉柄の途中から2番目の葉柄が分岐し、葉柄と葉柄の間から花柄が出てきます。
musasi_abumi02
2個の長い葉柄の間から花柄を立ち上げ、ボクシングのグローブのような仏炎苞を付けます。舷部(仏炎苞の蓋の部分)は袋状に内側に巻き込み、口辺部(仏炎苞の上部の脇)は張り出して耳のようになっています。この形が馬具の鐙(あぶみ)に似ていることから「武蔵鐙」と呼ばれるようになりましたが、特に武蔵の国(関東)に多いと云うことではなくて、武蔵の国で作られた鐙が良質で有名であったことに因(ちな)んでいるとのことです。
musasi_abumi03
3出複葉(3個の小葉からなる葉)の葉は2個で、やや光沢があり大きいです。サトイモの葉ほど大きくはありませんが、テンナンショウ属の中では際立って大きい葉です。
musasi_abumi04
ここでは4株のムサシアブミが見られました。3株がかたまり、1株が少し離れた所で花を咲かせていました。
ムサシアブミの近畿地方でのRDB状況は‥京都府・兵庫県:絶滅危惧Ⅱ類 となっています。
musasi_abumi05
ちなみに、こちらは我が家の ムサシアブミ です。これに比べますと、今回、山で見たムサシアブミは、思った以上と云うか、はるかに巨大だったことにビックリしました。
urasimasou02
あと、テンナンショウ属では、ウラシマソウ(浦島草)や‥
yukimotisou11
ユキモチソウ(雪餅草)も見ることが出来ました。Hさんの話では、ユキモチソウの生息地が昨秋の台風による倒木で下敷きとなり、更に土砂崩れで埋まってしまったそうです。写真のユキモチソウは山の某所で管理保護されているものです。
tigoyuri01
チゴユリ(稚児百合)。イヌサフラン科チゴユリ属の多年草。全国の落葉樹林下に生えます。
tigoyuri02
花期は4-6月で、茎の先端に1cmほどの白い花を一つだけ付けます。
narukoyuri01
ナルコユリ(鳴子百合)。キジカクシ科ナルコユリ属の多年草。本州以南の山林等に生えます。まだ開花には時期尚早で、僅かに蕾が開きはじめていたのはこの1株だけでした。
amigasa_yuri01
山麓の人家近くで見た アミガサユリ(編笠百合)です。ユリ科バイモ属の半ツル性多年草。原産地は中国で、殆んどが観賞用として栽培されています。
amigasa_yuri02
アミガサユリの花弁の内側です。花被片は6枚で、外側は淡黄緑色、内側には赤紫色の網目状斑紋があります。そのため編笠百合の名前で呼ばれます。和名は バイモ(貝母)です。
futarisizuka01
フタリシズカ(二人静)。センリョウ科チャラン属の多年草。全国の山林に生えます。前回取り上げたヒトリシズカに対し、花穂が2本(時に3-4本)付くのが和名の由来です。
futarisizuka02
葉は淡い緑色ですがヒトリシズカのような光沢はなく、花もヒトリシズカのような糸状にはならず、豆粒状です(3個のオシベが丸くなって子房を抱いています)。
itiyakusou01
イチヤクソウ(一薬草)。ツツジ科イチヤクソウ属の常緑多年草。全国の低山の林中に生えます。花が見られるかなと、ひそかに期待したのですが、ようやく花茎を立ち上げたばかりで固い蕾が見られただけでした。
久しぶりのHさんとの山歩きは、念願の野生のムサシアブミが見られるなど充実した一日となりました。
本日の歩程は 11.5km 所要時間4時間50分(休憩を含む)でした。