久しぶりに湿原植物を訪ねに行ってみました。
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イシモチソウ(石持草)。モウセンゴケ科モウセンゴケ属の多年草で、食虫植物です。関東以南の湿地周辺部の疎林や草原に生息します。花期は5-6月で、茎の上部または頂部に総状花序として2-10個の白い花を付けます。今回は花には少し早すぎたようで、開花していたのは僅かに数輪でした。花弁は5枚で、広倒卵形。午前10時頃に開花し、午後には閉じてしまいます。
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背丈は10-30cm程で、幅4-6mmの多数の腺毛をもつ三日月型の茎葉(捕虫葉)を数多く展開します。茎葉が小さくて細いので、 周囲に他の植物があると、気付かないことも多いです。捕虫葉には粘液滴がつき、腺毛から分泌される粘液は粘性が高く、小石を持ち上げるほどの粘性であるのが名前の由来です。
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三日月型の捕虫葉と腺毛の先の粘液です。イシモチソウは、環境省カテゴリで 準絶滅危惧(NT)、全国21府県でRDBに登録されており、近畿地方では‥京都府・奈良県・和歌山県:絶滅危惧Ⅰ類、大阪府・絶滅危惧Ⅱ類、兵庫県:準絶滅危惧種、滋賀県:分布上重要種 となっています。
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モウセンゴケ(毛氈苔)。モウセンゴケ科モウセンゴケ属の多年草で、食虫植物です。全国の日当たりの良い湿地帯や、湧水がしみ出す斜面や崖に自生します。花期は6-9月で、これも開花には早過ぎましたが、写真の中に黄色い豆モヤシのように見えるのが立ち上がりつつある花茎です。
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モウセンゴケが点在する湿地です。粘毛は赤く色づき、一面に生育している場所では赤い毛氈(もうせん)を敷いたように見えることから、モウセンゴケの名があります。
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葉には明瞭な葉柄があり、葉は円形、一面に長い毛があり、その先端から甘い香りのする粘液を出しています。全国17都府県でRDBに登録されており、近畿地方では‥和歌山県:絶滅危惧Ⅰ類、大阪府・奈良県:準絶滅危惧種 となっています。イシモチソウやモウセンゴケを見ているだけで食虫植物の不思議な魅力に引き込まれます。
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キショウブ(黄菖蒲)。アヤメ科アヤメ属の多年草。原産地はヨーロッパから西アジアで、江戸時代には日本には観賞用のハナショウブ(花菖蒲)に黄色の花がなかったため、明治期に観賞用として導入されました。しかし、繁殖力が強く、在来種に対する侵略性が高く、今では外来生物法で「要注意外来生物」に指定されています。
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カキツバタ(杜若)。アヤメ科アヤメ属の多年草。全国の水辺や湿地に群生し、5月から6月にかけて紫色の花を付けます。内花被片が細く直立し、外花被片(前面に垂れ下がった花びら)の中央部に 白い筋(斑紋)があるのが特徴です。環境省カテゴリで 準絶滅危惧(NT)、全国34都府県でRDBに登録されており、近畿地方では‥奈良県:絶滅危惧Ⅰ類、兵庫県:絶滅危惧Ⅱ類、京都府:準絶滅危惧種、滋賀県:その他重要種、大阪府:情報不足 となっています。
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ノハナショウブ(野花菖蒲)。アヤメ科アヤメ属の多年草。全国の水辺や湿原に生え、赤紫色の花弁の基部に 黄色の筋 が入るのが特徴です。園芸種のハナショウブの原種で、全国26都府県でRDBに登録されており、近畿地方では‥大阪府・奈良県:絶滅危惧Ⅰ類、京都府・兵庫県:準絶滅危惧種、滋賀県:分布上重要種 となっています。
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ハナショウブ(花菖蒲)の一種。ハナショウブは、ノハナショウブの変種(園芸品種)で、様々な育種が行われてきた結果、色々な花色や模様があり、複輪品種などもあります。ノハナショウブと同じ特徴(=外花被の生え際に黄色い筋)があります。
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これも ハナショウブの一種 です。アヤメ(菖蒲)、カキツバタ(杜若)、ハナショウブ(花菖蒲)は、どれも良く似ていますが、見分け方は、外花被に入る色や模様で、アヤメは綱目状模様、カキツバタは白い筋、ハナショウブの仲間は黄色い筋 が入ります。
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トキソウ(朱鷺草、鴇草)。ラン科トキソウ属の多年草。全国の日当たりの良い湿地に自生しますが、四国や九州では希少なようです。この湿原を訪ねた時は、まだ早過ぎて、この2株だけが咲いていました。花期は5-7月、茎頂に紅紫色の花を1つだけ付けます。和名は花の色が朱鷺(トキ)の翼の色に似ていることに由来します。環境省カテゴリで 準絶滅危惧(NT)、全国46都道府県でRDBに登録されている希少種です。近畿地方では‥大阪府・奈良県・和歌山県:絶滅危惧Ⅰ類、京都府・滋賀県:絶滅危惧Ⅱ類、兵庫県:準絶滅危惧種 となっています。
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湿原植物ではありませんが、一昨日(5/31)近くの山で、大好きな ササユリの一番花 と出会いましたので、速報として載せておきます。トキソウやササユリは、改めて取上げる機会があると思います。