半月ほど前に 久しぶりに「京都府立植物園」 を訪ねました。府立植物園内には「自然生態園」なる場所があり、自然な環境の下で珍しい山野草や樹木が植えられていて、当地近郊では滅多に見られない山野草や、珍しい希少な植物などを見ることが出来ます。このたびは「ある植物」を見たくて行って来ましたので、そこで出会った、独断と偏見に満ちた「私好みの花たち」を紹介します。
hanamyouga_IMG_3672cptハナミョウガ
私が見たかったのは、この ハナミョウガ(花茗荷)の花でした。ショウガ科ハナミョウガ属の常緑多年草。関東以西の山地の林床に生えます。花期は5-6月で、花序は穂状で直立し、花冠は3裂し、後方の1片は立ち上がってオシベを包みます。唇弁は卵形で長さ約1cm、白色で紅色の筋があり、縁は波状に縮れています。
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私がここ数年、探し回っている花が、この ハナミョウガ と マツグミ でした。奈良にはハナミョウガの自生地があるのですが、何故か開花と訪問のタイミングが合わず、見損なってばかりでした。確実に見るため、京都府立植物園のHPに「週間植物園」と云う「見頃の植物」情報が毎週出ますので、これで確認して出掛ければ間違いなしに花が見られる、と云う次第でした。花が咲いていないと、ミョウガそっくりで見分けが難しいです。
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写真の撮り方が良くなくて、余りキレイとは思えないかも知れませんが、一応、1つの課題がクリア出来ました。ハナミョウガは全国5府県でRDBに登録されており、近畿地方では‥京都府:準絶滅危惧種となっています。
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参考までに、閉花後のハナミョウガの実です。晩秋から冬にかけて赤く熟します(2017年3月某山で撮影)。
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タカネナデシコ(高嶺撫子)。ナデシコ科ナデシコ属の多年草。日本の北海道・中部地方以北の高山帯の岩礫地や草地に分布する高山植物で、カワラナデシコの高山型変種です。田中澄江著「花の百名山」では、北海道・斜里岳の花として紹介されています。全国6県でRDBに登録されています。
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シロウマアサツキ(白馬浅葱)。ヒガンバナ科ネギ属の多年草。エゾネギ(蝦夷葱)の変種で、本州の中部地方以北、北海道に生息します。名前の通り、北アルプスの白馬岳や、飯豊山、朝日連峰などが自生地として、よく知られています。全国8府県でRDBに登録されています。近年、京都府北部でも広範囲に自生しているのが確認され、2015年版京都府RDBで「要注目種」として登録されました。
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ツキヌキオトギリ(突抜弟切)。オトギリソウ科オトギリソウ属の多年草。高知県及び九州のごく限られた場所にしか分布していない超希少種です。環境省カテゴリ:絶滅危惧ⅠB類(EN)、高知県では既に絶滅、九州の自生5県でも全て絶滅危惧種に登録されています。
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ツキヌキオトギリは、対になった二枚の葉が基部でくっつき、茎が葉を突き抜けたようになっていることが名前の由来です。
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ヤマコンニャク(山蒟蒻)。サトイモ科コンニャク属の多年草。仏炎苞は基部が暗緑色、内側は紫色を帯び、両面に白い斑点があり、先端が鋭くとがっています。高知県、九州南部から沖縄県にかけて分布する、これまた超希少種です。環境省カテゴリ:絶滅危惧Ⅱ類(VU)。自生地の高知県・長崎県・鹿児島県・沖縄県で絶滅危惧種に登録されています。
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ヤマコンニャクの花径の高さは約1m、葉は1枚だけで花後に開くそうです。普通のコンニャクと違い、球茎は食用にはならないそうです。
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タテヤマウツボグサ(立山靫草)。シソ科ウツボグサ属の多年草。ウツボグサの高山型変種です。立山の名前が付きますが、立山だけでなく、本州の中部地方以北の高山帯・亜高山帯に自生します。全国3県でRDBに登録されています。
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シロバナクサナギオゴケ(白花草薙尾苔)。ガガイモ科カモメヅル属の多年草。本州の東海・近畿地区に限定分布します。茎は直立し、先はツル状に伸び、卵状被針形の葉が茎の中ほどに数対つきます。花はとても小さくて(花径6-9mm)、風に揺れたり、白色ないし淡黄色の花は色飛びもして、まともに撮れたのはこの写真だけでした。

このように全国でも珍しい希少な花が、身近に見られるのが植物園の魅力ですね。
ところで、先日(6/9)兵庫県の六甲高山植物園で、野生ランの王者とも呼ばれる、希少なアツモリソウが白昼堂々と2株も盗掘された、と云うニュースに接し、驚きと悲しみと情けなさが隠せませんでした。
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さて最後に、植物園で見た園芸品種の花の中で、私が気に入ったのは ムギセンノウ(麦仙翁)でした。ナデシコ科ムギセンノウ属の一年草。原産地はヨーロッパで、日本には明治10年(1877)に渡来しました。花期は5-6月で、花色はピンク色もしくは白色です。葉が細くて麦に似ていますので、別名は ムギナデシコ(麦撫子)、園芸的には学名の アグロステンマ と呼ばれます。
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ムギセンノウ・白花。園内の大花壇に、春の草花たちが寄せ植えされていて、ムギセンノウもその1つでした。
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背丈は60-90cmほどで、ヨーロッパでは麦畑の雑草扱いだそうですが、花が美しいので園芸用として供されています。スッキリしていてシンプルな花で気に入りました。