当地や近隣をウォークした時に出会った樹木の花たちです。
マタタビ(木天蓼)の雄花。マタタビ科マタタビ属のツル性落葉樹。全国の山地の林縁に生えます。
マタタビ(木天蓼)の雄花。マタタビ科マタタビ属のツル性落葉樹。全国の山地の林縁に生えます。
マタタビの白い葉。花期は6-7月で、花期になりますと、枝の先端部分にある葉が白くなります。この白化現象は、花粉媒介者の虫たちに「花が咲いたよ」と云うサインを出しているのです。写真のように、花は葉の裏側に隠れていて、外側からでは見えにくいのを補う役目を担っていると云われています。
マタタビの通常の実。両性花(雌花)についた通常の実は、砲弾型と云うかドングリのような長楕円形です。この実は生薬の世界では「天木実(てんもくじつ)」と呼ばれます。
一方、こちらはカボチャのような形で表面が凸凹した球形の果実です。この実も生薬となりますと「木天蓼(もくてんりょう)」と呼ばれます。これはマタタビアブラムシと云う虫が産卵した 虫こぶ で、生薬としては、こちらの方が高級なんだそうです。
マタタビの両性花 です。花の中央には放射状に広がる20数本の白い花柱を持つメシベがあり、周囲をオシベが取り囲んでいます。ここからが今回の核心です ⇒ マタタビの花については、図鑑や解説書によって相違があるので要注意です。曰く、マタタビには、①雄花と両性花がある、②雄花と雌花がある、③雄花と両性花と雌花がある、の3説があります。雄花と両性花は、今回取上げた写真の通りです。雌花と書かれている図鑑等については、上の写真の左端のものが 雌花 として取上げられています。しかし結論から言いますとこれは間違いです。両性花は開花してしばらくすると、オシベと花びらが落花してしまい、左端の写真のように、5枚の萼片と小さな子房だけの姿となります。従ってこれは両性花の変化したあとの姿であって雌花ではありません。よって③は間違いです。また研究等によりますと、両性花のオシベの花粉には発芽能力がないとのことで、両性花は機能的には雌花とほぼ同等なので、②は間違いと言うには厳しいのですが、厳密にはマタタビには純粋な雌花と云うものはありませんので、①の「マタタビは 雄花と両性花がある」と云うのが正解です。
更に補足しますと、木天蓼(もくてんりょう)=マタタビの虫こぶは雄株に出来る、と書かれているものを見かけますが、写真のように雌株にも虫こぶは出来ます。マタタビアブラムシは雄花や両性化がまだ蕾の時に、蕾に産卵しますので、どちらにも虫こぶが出来ます。
シャシャンボ(小小坊)。ツツジ科スノキ属の常緑樹。関東以西に分布し、主として西日本に多く、関西地方でもよく見られます。小低木の多いスノキ属の中では大きい方で、樹高5-10mほどになります。7-8月頃に壷状の小さな白い花を咲かせます。
果実は秋になると黒紫色に熟します。直径5-6mmの小さな実は甘酸っぱく生食できます。日本のブルーベリーとかワイルドベリーとか呼ばれます。
ナツフジ(夏藤)。マメ科フジ属のツル性落葉樹。関東以西に自生する日本固有種です。名前は夏に花を咲かせることに由来します。別名は、ドヨウフジ(土用藤)と云います。
花期は7-8月で、花は淡いクリーム色の蝶形花で、総状花序が垂れ下がります。ナツフジの ツルは S巻き です。
ちなみに、ツルを左巻きとか右巻きとか云う呼び方は、不正確で分かりにくいので、私は以前から「S巻き・Z巻き」と云う呼び方にしています。このナツフジのツルも、牧野式では右巻き、反牧野式では左巻きとなっていて、参照する図鑑によっては全く正反対の表現となっていて、植物の理解を惑わせている一因となっています。S巻き・Z巻きなら誰が見ても同じように理解できますので統一化して欲しいです。
イヌツゲ(犬黄楊)の雄花。モチノキ科モチノキ属の常緑低木。全国に分布します。雌雄異株で、花期は5-7月頃。雄花はまとまって付きますので、雌花よりは目立ちます。ツゲと名が付いていますが、ツゲ(ホンツゲ)はツゲ科で科が異なります。また、ツゲは葉を対生しますが、イヌツゲは互生です。
モッコク(木斛)の雄花。ツバキ科モッコク属の常緑樹。雌雄異株で、関東以西の太平洋側に生えます。ツバキ科特有のツヤツヤした葉が最大の魅力で、大きくなると剪定せずに放任しても樹形を整えやすいこと、樹齢を経るに従って樹姿に風格が出ることから「庭木の帝王」と云われ、モチノキ・モクセイと共に三大庭木と呼ばれます。
こちらは モッコクの両性花 です。葉の付け根部分(葉柄)が赤いのも大きな特徴です。
クマノミズキ(熊野水木)。ミズキ科ミズキ属の落葉樹。本州以南の山地に生えます。名前は三重県熊野に産するミズキの意味です。樹高は8-12m。花期は6-7月で、新枝の先に、直径8-14cmの散房花序に、小さな多数の白花を付けます。
ヤマトタチバナ(大和橘)。ミカン科ミカン属の常緑低木。単にタチバナとか、ニホンタチバナとも呼ばれます。日本に古くから野生していた日本固有の柑橘です。日本書紀や古事記には「非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)」と呼ばれる不老不死の実として記されています。昭和12年(1937)に制定された文化勲章では、当初、桜花に曲玉を配した意匠でしたが、昭和天皇の意向で桜花が橘花に変更されました。昭和天皇はこのことについて、後年、否定もなさらず「橘の方は常緑樹でもあるし、古事記にも出てくるし、文化と言うのは生命が長くなければならないと感じたから」と述べておられます。私も、気品があって永久性を物語るタチバナが、文化勲章のデザインに選ばれたことは良かったと思っています。
マタタビの通常の実。両性花(雌花)についた通常の実は、砲弾型と云うかドングリのような長楕円形です。この実は生薬の世界では「天木実(てんもくじつ)」と呼ばれます。
一方、こちらはカボチャのような形で表面が凸凹した球形の果実です。この実も生薬となりますと「木天蓼(もくてんりょう)」と呼ばれます。これはマタタビアブラムシと云う虫が産卵した 虫こぶ で、生薬としては、こちらの方が高級なんだそうです。
マタタビの両性花 です。花の中央には放射状に広がる20数本の白い花柱を持つメシベがあり、周囲をオシベが取り囲んでいます。ここからが今回の核心です ⇒ マタタビの花については、図鑑や解説書によって相違があるので要注意です。曰く、マタタビには、①雄花と両性花がある、②雄花と雌花がある、③雄花と両性花と雌花がある、の3説があります。雄花と両性花は、今回取上げた写真の通りです。雌花と書かれている図鑑等については、上の写真の左端のものが 雌花 として取上げられています。しかし結論から言いますとこれは間違いです。両性花は開花してしばらくすると、オシベと花びらが落花してしまい、左端の写真のように、5枚の萼片と小さな子房だけの姿となります。従ってこれは両性花の変化したあとの姿であって雌花ではありません。よって③は間違いです。また研究等によりますと、両性花のオシベの花粉には発芽能力がないとのことで、両性花は機能的には雌花とほぼ同等なので、②は間違いと言うには厳しいのですが、厳密にはマタタビには純粋な雌花と云うものはありませんので、①の「マタタビは 雄花と両性花がある」と云うのが正解です。
更に補足しますと、木天蓼(もくてんりょう)=マタタビの虫こぶは雄株に出来る、と書かれているものを見かけますが、写真のように雌株にも虫こぶは出来ます。マタタビアブラムシは雄花や両性化がまだ蕾の時に、蕾に産卵しますので、どちらにも虫こぶが出来ます。
シャシャンボ(小小坊)。ツツジ科スノキ属の常緑樹。関東以西に分布し、主として西日本に多く、関西地方でもよく見られます。小低木の多いスノキ属の中では大きい方で、樹高5-10mほどになります。7-8月頃に壷状の小さな白い花を咲かせます。
果実は秋になると黒紫色に熟します。直径5-6mmの小さな実は甘酸っぱく生食できます。日本のブルーベリーとかワイルドベリーとか呼ばれます。
ナツフジ(夏藤)。マメ科フジ属のツル性落葉樹。関東以西に自生する日本固有種です。名前は夏に花を咲かせることに由来します。別名は、ドヨウフジ(土用藤)と云います。
花期は7-8月で、花は淡いクリーム色の蝶形花で、総状花序が垂れ下がります。ナツフジの ツルは S巻き です。
ちなみに、ツルを左巻きとか右巻きとか云う呼び方は、不正確で分かりにくいので、私は以前から「S巻き・Z巻き」と云う呼び方にしています。このナツフジのツルも、牧野式では右巻き、反牧野式では左巻きとなっていて、参照する図鑑によっては全く正反対の表現となっていて、植物の理解を惑わせている一因となっています。S巻き・Z巻きなら誰が見ても同じように理解できますので統一化して欲しいです。
イヌツゲ(犬黄楊)の雄花。モチノキ科モチノキ属の常緑低木。全国に分布します。雌雄異株で、花期は5-7月頃。雄花はまとまって付きますので、雌花よりは目立ちます。ツゲと名が付いていますが、ツゲ(ホンツゲ)はツゲ科で科が異なります。また、ツゲは葉を対生しますが、イヌツゲは互生です。
モッコク(木斛)の雄花。ツバキ科モッコク属の常緑樹。雌雄異株で、関東以西の太平洋側に生えます。ツバキ科特有のツヤツヤした葉が最大の魅力で、大きくなると剪定せずに放任しても樹形を整えやすいこと、樹齢を経るに従って樹姿に風格が出ることから「庭木の帝王」と云われ、モチノキ・モクセイと共に三大庭木と呼ばれます。
こちらは モッコクの両性花 です。葉の付け根部分(葉柄)が赤いのも大きな特徴です。
クマノミズキ(熊野水木)。ミズキ科ミズキ属の落葉樹。本州以南の山地に生えます。名前は三重県熊野に産するミズキの意味です。樹高は8-12m。花期は6-7月で、新枝の先に、直径8-14cmの散房花序に、小さな多数の白花を付けます。
ヤマトタチバナ(大和橘)。ミカン科ミカン属の常緑低木。単にタチバナとか、ニホンタチバナとも呼ばれます。日本に古くから野生していた日本固有の柑橘です。日本書紀や古事記には「非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)」と呼ばれる不老不死の実として記されています。昭和12年(1937)に制定された文化勲章では、当初、桜花に曲玉を配した意匠でしたが、昭和天皇の意向で桜花が橘花に変更されました。昭和天皇はこのことについて、後年、否定もなさらず「橘の方は常緑樹でもあるし、古事記にも出てくるし、文化と言うのは生命が長くなければならないと感じたから」と述べておられます。私も、気品があって永久性を物語るタチバナが、文化勲章のデザインに選ばれたことは良かったと思っています。
コメント
コメント一覧 (6)
なかなか興味深い記事ばかりですね(^^♪
マタタビも奥が深そうですね。シャシャンボは懐かしいです。有馬富士公園には1本だけ自生してました。おいしいかな?とつまみ食いしましたが、じゃりじゃりして今一だったのを覚えています。
マタタビそのものを見るチャンスは有るんですけど。
コメント有難うございます。
マタタビの花や実については、諸説があり、自分なりに一度整理しておきたいと思っていました。今回の内容が正しいかどうかは分かりませんが、自分が見てきた経験では、こうではないかと思います。シャシャンボは各地で見てきましたが当地の里山で見たのは初めてでした。沢山の木が生えていて、自分の目が節穴だらけだったことに気がつきました。
コメント有難うございます。
マタタビは高木にまとわりついていることが多いので、遠くから見ることが多いですが、山中に入れば結構、独り立ちしている木や低木に絡んでいる木もあって、花や実も近くで見られます。猫がいたら、枝を持って帰れば、大喜びするのですが‥。
コメント有難うございます。
「また旅」に出たいと思わせるほど、疲労回復に効果があるそうなので、マタタビの虫こぶを採取して、マタタビ酒を作りたいと思っているのですが、見ての通りの醜い姿で、中に虫が入っていると思うと、ついつい躊躇してしまいますね。S巻きZ巻きは普及して欲しいですね。