緊急事態が解除された半月後の6月上旬、ステイホームで鈍った足の調子を確かめに稲荷山登山に行きました。
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伏見稲荷大社 は、世界最大の旅行クチコミサイト・トリップアドバイザー(米国)の「外国人に人気の日本の観光スポット」で、2014年から2019年まで6年連続して1位となっている人気観光地です。写真は伏見稲荷大社・本殿周辺と左後方に聳える稲荷山です(この俯瞰写真は 伏見稲荷大社ホームページからお借りしました)。稲荷山は、伏見稲荷大社の東奥に位置する 東山三十六峰の最南端の山で、標高は233mです。古くから神の降臨地とされていて、三ヶ峰(みつがみね。一之峰・二之峰・三之峰と三つの峰が連なる山)とも呼ばれました。
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稲荷山に登るには、大別して山麓の東西南北からの4コースがあります。東は山科(やましな)の大石神社(忠臣蔵の大石内蔵助を祀る神社)から西野山を経由するコースが、西は伏見稲荷大社本殿からの参道コースが、南は藤森方面からの深草トレイルが、北は東福寺からの京都一周トレイルがあります。稲荷山登山の殆どは本殿からの参道コースをとりますが、今回は稲荷山南麓の深草トレイルから登ることにしました。深草トレイルの竹林道です。
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稲荷山の南麓の山道を歩く深草トレイルには、多くの修験道の滝があります。白菊の滝を過ぎ‥
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御劔(みつるぎ)の滝を過ぎ‥
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南谷の渓流沿いに石段を登っていきますと、細い道が2つに分岐します。右は大岩山へと続く深草トレイルで、左が稲荷山一之峰への南谷ルートです。左へ進むと、すぐに末広の滝です。そこから先は‥
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樹林帯の急坂をジグを切るように山道が続いています。滑り止めを兼ねたような簡易な石段が設けられています。
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山科・大石神社方面への分岐点を過ぎると、ようやく稲荷山・お山周回コースの鳥居が目に入ってきました。
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お山周回コースに合流します。この鳥居の先が‥
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伏見稲荷・一之峰・上之社。稲荷社が出来る前の古代(3-4世紀頃)には、各峰上に古墳が造営されていました。
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上之社・社殿の後方にある磐座。ここが 稲荷山の頂上(標高233m)です。ここからあとは下り道になります。
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二之峰・中之社、間之峰・荷田社を通過し、三之峰・下之社まで下りてきましたが、2-3人の人に出会っただけです。
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四つ辻。ここが お山巡り周回コースの基点 で、「にしむら亭」の店の前に小さな石標が建てられています。左方面が頂上への左回りコース、正面の鳥居方面が頂上への右回りコースです。
清少納言は有名な『枕草子』の中で、初午詣に来た時のことを次のように記しています。「2月午の日の暁に、稲荷の社に詣で、中ノ社のあたりにさしかかるともう苦しくて、なんとか上ノ社までお参りしたいものだと念じながら登っていくと、もはや巳の刻(午前10時頃)ばかりになり、暑くさえ感じられるようになってきて、涙をこぼしたいほどわびしい思いをしつつ休息していると、40歳位の普段着の女が、私は今日7度参りをするつもりで、もう3回巡ったから あと4回くらいは何でもない。未の刻(午後2時)頃には家に帰ることができると言った。女の強健ぶりが誠にうらやましく、なり代わりたいものだ」と述懐しています。当時の中ノ社は、現在山頂にある二之峰・中之社ではなく、中腹あたりにあった社のことです。お山巡りの周回コースはどちらから回っても構わないのですが、正直 左回りコースの方が急坂で辛いです。清少納言は左回りで登ってバテていますが、清少納言にあやかりたい人や、自分の肉体を少しでも苦しめて罪を贖いたいと思う人などは、左回りで登ることがお勧めです。
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四つ辻からは、京都市内南部方面が一望できます。後方に霞んでいるのは京都・西山連峰です。
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四つ辻から三つ辻を経て、伏見稲荷・奥社に下りてきました。一般的に伏見稲荷参拝客の大半は、山麓の本殿から千本鳥居を経て、この奥社まで来て、折り返して戻ることが多いです。
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本殿・奥社間の参道が「千本鳥居」と云われる区間です。千本鳥居は本殿から奥社に向かう時は、最初は1本道ですが、途中から2本道になり一方通行(右側通行)となります。今回は下山なので右側の千本鳥居を下ります。
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本殿へ下る千本鳥居ですが、全く人影が見られません。こんな光景は初めて見ました。
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本殿裏の玉山稲荷社に下りてきました。正面の鳥居をくぐると、奥社への千本鳥居の入口です。
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一寸 千本鳥居の上り口 を覗いてみました。以前は上下共用道でしたが、今は上り専用の一方通行になっています。ここでも人影はありません。絵葉書のような、人間が写っていない写真を撮りたい人は、今がチャンスです。
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伏見稲荷大社の本殿(左)と拝殿(右)の横姿です。幾人かの人が、ようやくフレーム内に現れました。ちなみに、創建以来 山頂にあった稲荷の社(やしろ)が山麓に移されのは、永享10年(1438)のことで、後花園天皇の勅命で、室町幕府・6代将軍足利義教によって移されました。清少納言が生きた平安時代には、イヤでも山頂まで詣でる必要があったのです。
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伏見稲荷大社・楼門に、時節柄「茅の輪(ちのわ)」が設けられていました。茅の輪(茅草で作られた大きな輪)は、正月から6月までの半年間の罪穢を祓う夏越しの大祓に使用され、それをくぐることにより、疫病や罪穢が祓われると云われています。関西の神社ではよく見られ、くぐり方は、左回り・右回り・左回りと、8の字を書くように3度くぐり抜けるのが普通ですが、ここは1回くぐり抜けるだけのようでした。コロナを祓ってほしいです。
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楼門から二の鳥居・一の鳥居を過ぎると、JR稲荷駅です。稲荷駅から振り返って見た伏見稲荷と稲荷山です。
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参考までに、これは インバウンドで大賑わいしている頃に撮った写真で 8割ほどが外国人です。
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本日の稲荷山登山の行程です。京阪・藤森駅→宝搭寺→深草トレイル→御劔の滝→稲荷山・南谷ルート→お山巡り周回コース合流→一ノ峰(稲荷山頂上)→四つ辻→三つ辻→奥社→千本鳥居→本殿→JR稲荷駅→京阪・藤森駅 まで、歩程 9.1km、所用時間 3時間15分でした(地図はクリックすると拡大します)。