イベント・ウォーキングが集中する土・日曜日に今月は雨となる日が多く、主催者をやきもきさせているようです。平日は一転して好天のウォーク日和です。天気もいいので、お隣の笠置町へ行って、笠置山に登ることにしました。笠置山は後醍醐天皇と鎌倉幕府(足利軍)との「笠置山の戦い」で有名な所で、山上の笠置寺には後醍醐天皇の行在所跡があり、紅葉の名所でもあり、全山京都府立笠置山自然公園に指定されています。ところが地図などを見ると、笠置山の標高は殆どが 288m と記されていますが、希に 324m と記されていることがあります。一般的には笠置寺がある山上を笠置山としているケースが多いので、この場合 288m となります。ただ、この笠置寺の更に奥にもう一つのピークがあり、こちらに3等三角点「点名:笠置山」が置かれているのです。こちらの標高が 324m なのです。ピークが2つ存在しているのです。一般観光客は前者(笠置寺)を笠置山と理解し、登山者は後者(三角点)を笠置山と呼んでいます。本日は一人気ままに、登る人も殆どいない後者に行くことにしました。

★笠置山・三角点に登る 5/17

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 JR笠置駅から一旦西方の栗栖天満宮のある小高い丘に登り、下山して府道33号線・白砂川沿いに木津川に架かる笠置大橋まで戻りました。その途中の白砂川から東方に見た笠置山です。正面が笠置寺のある頂き、その右手奥に見えるのが三角点のある笠置山です。

 笠置大橋の手前で東に方向を変え、木津川左岸を歩きます。左手は木津川、右手は笠置山の斜面を走るJR関西本線と、それに沿った細い道が続きます。笠置山は花崗岩の山で、大きな巨石が山の上にも、川畔にも沢山見られます。

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 木津川畔にある巨石に彫られている阿弥陀如来磨崖石仏。苔むしていますが、享禄三年(1530)の銘があるそうです。阿弥陀如来磨崖石仏は山上にもあるのですが、それよりも製作年度が4年ほど早いそうです。

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 JR線沿いの歩道。振返ると、木津川の後方にかすかに笠置大橋が見えています。

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 前方を見ると木津川左手に国道163号線が山の中をトンネルで走っており、右手(こちら側)にはJR関西本線が走っているのですが、樹木に覆われて、山と川以外は全く見えません。

★ウツギの仲間たち

 木津川畔や笠置山中では、何種類かのウツギ類が花を咲かせていました。

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 ウツギ(空木) が早くも咲き出していました。

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 ガクウツギ(額空木。ウツギの名前ですがアジサイの一種です。

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 これはガクウツギよりも花が小さい コガクウツギ(小額空木)。

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 いつ見ても可愛い ツクバネウツギ(衝羽根空木)。

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 マルバウツギ(丸葉空木) 。花序のすぐ下の葉は、柄がなく茎を抱いています。

布目川甌穴群とムロウテンナンショウ(室生天南星)

 笠置山の東山麓に木津川に注ぎ込む支流、布目川(ぬのめがわ)が流れています。

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 その木津川と布目川の合流点に関西電力・布目川発電所があり、そこを回り込んで布目川流域を少し歩いてみました。

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 この辺りの河床は非常に堅い花崗岩が続きます。河底の窪みに渦巻き流が生じ、その中に落ちた小石が回転しながら、数十万年から数百万年かけて岩を削り、円筒形の穴を作ります。

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 そうして削られた丸い岩穴を甌穴(おうけつ=ポットホール)と云います。大小様々なポットホールが分布し、布目川甌穴群として、京都府の地形レッドリストに選定されています。

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 この渓流沿いの山道で出会ったマムシグサの一種、ムロウテンナンショウ

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 仏焔包は緑色、付属体は先は細く先端は膨らんで濃緑色。マッチ棒みたいです。

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 上から見た仏焔包の舷部、とても短いです。これが特徴です。

★樹林帯の悪路を三角点へ

 いろいろ道草をしたあと、布目川の合流点近くから笠置山三角点に向かって登りはじめました。道と云うより水のない落ち葉が積もった沢歩きです。

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 沢筋の落ち葉の中でうずくまっていたヒヨドリのような大きな幼鳥(名前はわかりません)。巣から落ちたのでしょうか、疲れ果てたのか目は閉じたまま身震いしていました。輝いていたブルーの羽に惹かれましたが、助けてあげたいけど、これも自然の摂理。何とか生きながらえてくれよと祈りながらその場を通り抜けました。どこかの登山倶楽部が付けたであろう目印のビニールテープを探し求めながら、樹林帯の中を更に登り続け、ようやく尾根筋らしき所に出てきました。

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 樹林帯の尾根筋に沿っを歩いていたら、突然左手に金網フェンスと、その先に広い芝生が目に入りました。フェンスは尾根筋に延々と張られていて、フェンス沿いを更に10分ほど歩くと、向う側が見渡せるスポットがありました。「かさぎゴルフ倶楽部」のゴルフ場でした。でも三角点は見当たりません。

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 もう見落としたのかも、と平坦になった山道をしばらく歩き始めた時に、道を塞ぐように樹木が横倒しになっていました。私は向う側から歩いて来たので樹木の下を潜り抜けて通過したのでしたが、ふと気になって後を振返ったら、小さな標識が目に入りました。向う側からは標識とは気が付きませんでした。あっ!三角点はここや! 矢印に従い、この山肌をよじ登りました。

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 樹木に囲まれて全く見通しがききませんが、僅かな空き地になった所に石碑が建っていました。

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 笠置山・3等三角点(標高324m)でした。この三角点へは笠置寺から来るのが正規のルートだったようで、ここからの帰り道は広い東海自然歩道に合流して、快適な道でした。本日は全く裏ルートから登って来ましたので、悪戦苦闘の連続でしたが、笠置寺からのルートだったら全くラクラク・コースでした。

★下山道で出会った植物たち

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 ギンリョウソウ(銀竜草)。

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 オドリコソウ(踊子草)。

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 最後にシダ類を2つ。山の木陰の斜面に多い シシガシラ(獅子頭)の胞子葉 が出ていました。真っ赤なムカデのような姿です。

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 ベニシダ(紅羊歯)の新芽も大きくなって、葉裏には胞子嚢がついてきました。

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 本日はGPSのスイッチを入れ忘れてしまいましたので、ウォーキング・マップは現地の案内地図に手書きで歩行軌跡を描いてみました。歩程は約 10.0km でした。