明治初期に絶滅してしまった 日本狼(ニホンオオカミ) に、若い頃から大変興味を持っていて、随分 日本狼に関する書物を購読したり、情報収集をしてきました。年末にネットサーフィンしていたら、偶然、和歌山県立自然博物館で、新春の1/4~2/1までの1ヶ月間に限り、貴重な日本狼の剥製が展示公開されることを知りました。これは何が何でも見に行かなければなりません。忘れないようにメモしておきました。ところが、日時指定のない外出は、天気任せが殆どなので、天候が良い日は他の予定が入っていたり、予定がない時は天候が優れないなどで、行きそびれているうちに、残り僅か10日程となってしまいました。あわてて週間天気予報を調べ、1/24-25 の土・日曜日は晴れとのことで、これを信じて、1/25(日)に和歌山行きの計画を確定しました。

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 西名阪道から阪和道へと高速一本で行く予定でしたが、部分開通している京奈和道を利用すると、高速料金も不要なので(今は無料で走れます)、これを利用しない手はないし、時間的にも大差はなさそうと思われ、急きょ予定変更です。早くて2時間、遅くても3時間で到着するだろうと推測して、当日は8時半に自宅を出ました。予測通り、所要2時間半、午前11時前に、和歌山県海南市にある 「和歌山県立自然博物館」 に到着です。

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 切符売場で免許書を提示しました。ここは65歳以上なら無料なんですって。65歳以上でも、エリア内の住民なら無料だが、他府県や他の市町村の人間は有料というのに、よく出くわしますが、和歌山県は他府県の人間にも太っ腹でした。入場料¥470は有難く我が懐へと戻ってきました。館内入口の「今日の見もの」に、コケギンポとニホンオオカミの可愛い絵が貼ってありました。

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 海の傍に建っていますので、大水槽や個別水槽に海水魚や淡水魚が多数展示されており、日曜日なので子供連れの親子がたくさん入場していました。オオカミは第二展示場ですので、私は先にそちらへ急ぎました。第二展示場へ入った所に、ガラスケースに入れられた日本狼の剥製が目に飛び込んできました。ケースの前に座り込んでいたおっちゃんは、写真を撮ったりメモをとったりと、私が帰る時まで、ずっとこの場所から離れることはありませんでした。

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 おっちゃんが少し移動してくれた合間に、まずは正面から日本狼と対面です。

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 日本狼の剥製は、日本に3体(国立科学博物館、東大、和歌山大に各1対)、オランダに1体あり(幕末にシーボルトが持ち帰っている)、他にもロンドンやベルリンの博物館には日本狼の毛皮や骨が保管されています。長年、和歌山大学で保管されていたものが、県立自然博物館に寄託され、ここで収蔵されています(普段は非公開です)。

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 この個体の標本データです。翌年の明治38年(1905)に、奈良県東吉野村鷲家口(わしかぐち)で捕獲された若い雄1頭が、日本で見られた最後の狼となってしまいました(これが買い取られてロンドンの大英博物館に持ち込まれることになるのですが、買い取り交渉時には狼の遺骸は腐り始めており、剥製にするのは諦めて毛皮と骨格にして英国に送られたそうです)。一応、この年(1905)が日本狼の絶滅した年とされています。

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 前方から斜めに横顔を見てみました。

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 正面からの顔のアップです。日本狼の顔の特徴は 「目が丸い。耳先は丸く、耳は頭の真上に付いている(日本犬は目が三角、耳先はとがり、耳は頭のやや横に付く)。上唇は上がかぶさり気味である」と云われています。この標本は今まであった標本を、昭和55年(1980)に作り直したものです。この時に、肉食獣に特徴的な突き出た鼻・顎の精悍な顔が失われ、鼻・顎の部分が短く丸みを帯びた顔に作られてしまいました。大きな声では言えませんが、巷では修復ミスであったと指摘されています。でも、耳などにはオオカミの特徴が感じられました。

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 ニホンオオカミの前足は、縦9cm×横8cm程度、後足は14cm×10cm程度と云われています。最も重要な特徴は 「日本狼には 水かき がある」 ことです。指間の皮膜が発達して、水掻きのようになっており、皮膜に剛毛が生えているそうで、それを確認したくて写真に撮ってみたのですが、良く分かりませんでした。後足は、足型の先端外辺に五指の跡が花びらのようにつくのが特徴で、犬は四指の跡しか付かないので、猟師は足型を見ただけでオオカミかイヌかが判断出来たそうです。その肝心の後足のことや、尻尾の毛並みにも特徴があると聞いていたのに、訪れた時には、顔や前足以外のことは すっかり失念していて、写真を撮り忘れてしまいました。惜しいことをしました。

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 ケースの後方に、日本狼の大きさがわかるように、比較用犬型が取り付けられていました。前方から順に、黒いのが紀州犬、茶色が日本狼、グレーが秋田犬、白いのが北海道にいたが絶滅してしまった蝦夷狼(エゾオオカミ)、の標準的な大きさです。映画やTVで見る外国の大陸狼=灰色狼(ハイイロオオカミ)は大きくて、蝦夷狼も灰色狼の亜種と云われています。こうした狼のイメージから、日本狼も大きかったのではと思われがちですが、ご覧の通り、中型の日本犬ほどでした。世界中の狼のなかでは最も小さい狼でした。ただ、日本狼は、日本犬より脚は長くて、脚力も強かったと云われており、山を駆け廻るのに都合のよいように、前足は後ろ足よりも少し短めであったようです。
 今まで写真では何度も見てきた日本狼ですが、実物に会いたいと云う長年の夢がやっとかなって、大満足の和歌山訪問でした。退館時に、スタッフの人に日本狼の詳しい資料はないか尋ねてみましたが、ありませんとのことでした。