夏の金剛山で出会った花の続き(最終回)です。

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 ジャコウソウ(麝香草)。シソ科ジャコウソウ属の多年草。8-9月に上部の葉腋に1-3個の花をつけます。葉腋から出る花柄は短く、花柄の長いタニジャコウソウ(谷麝香草)との区別点となっています。
余談ですが、京都府ではタニジャコウソウは50年以上前に絶滅してしまったと考えられていましたが、数年前、光田先生* と 京都府下の山歩きにご一緒させてもらった時に、絶滅したはずのタニジャコウソウと出会い、生息を確認した思い出があります。
光田重幸先生:京都の某大学准教授。日本におけるシダ植物の権威者で、日本シダ学会をはじめとして多くの植物学会に名を連ねておられます。研究分野は「絶滅危惧生物の保全」等で、京都府レッドデータブック(RDB)に携わる希少野生生物保全専門委員会の委員も兼ねておられます。ちなみにタニジャコウソウは、この時(2012)の発見により、今まで絶滅種(2002年版RDB)とされていたものが、2015年に改定された新しい京都府RDB版では、絶滅寸前種(絶滅危惧Ⅰ類)に変更されました。

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 参考までに、これが京都府下での生息が確認できた時の タニジャコウソウ(谷麝香草) です。ジャコウソウに比べて花柄が長いのがわかります。近畿地方のRDB状況‥京都府・兵庫県:絶滅危惧Ⅰ類、奈良県・和歌山県・三重県:絶滅危惧Ⅱ類、大阪府:準絶滅危惧種。

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 一方、ジャコウソウの近畿地方のRDB状況は‥奈良県・和歌山県:準絶滅危惧種。

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 ボタンヅル(牡丹蔓)。キンポウゲ科センニンソウ属のツル性落葉樹。センニンソウの花とよく似ていますが、センニンソウの花糸は萼片よりはるかに短いですが、ボタンヅルの花糸は萼片と同じかそれ以上に長いです。一番の違いは葉っぱで、ボタンヅルは名前の通り、葉がボタン(牡丹)の葉に似ていることです。

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 キツリフネ(黄釣船)。ツリフネソウ科ツリフネソウ属の一年草。日本全国、低山から山地にかけて分布し、水辺などのやや湿った薄暗い場所に自生します。

Kinmizuhiki
 キンミズヒキ(金水引)。バラ科キンミズヒキ属の多年草。長くのびた茎の上部に、小さな黄色5弁花を穂状につけます。果実はいわゆる”ひっつき虫”となって散布されます。

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 オトギリソウ(弟切草)。オトギリソウ科オトギリソウ属の多年草。オトギリソウの仲間は、お互い大変よく似ている上に、地域的な固有種や変種も多いので、同定が非常に難しい花です。

Matatabi
 マタタビ(木天蓼)の実。マタタビ科マタタビ属のツル性落葉樹。右の実が通常の果実で、食用として利用されます。左の凸凹実が虫こぶとなったもので、薬用効果はこちらの方が高いと云われています。

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 オカトラノオ(丘虎の尾)。サクラソウ科オカトラノオ属の多年草。白い花びらは5枚だが、花の根元でつながっている合弁花です。

Otokoesi

 オトコエシ(男郎花)。スイカズラ科オミナエシ属の多年草。いわゆる秋の七草のオミナエシ(女郎花)は黄色い花で、美しくよく目立つのに対し、オトコエシの花は白色で、オミナエシに比べると影が薄いです。

Momijigasa

 モミジガサ(紅葉笠)。キク科コウモリソウ属の多年草。葉はモミジ状に裂け、8-9月頃に、茎の先に円錐花序状にやや紫色を帯びた白色の頭花をつけます。まだ花期には少し早くて蕾状態でした。
 その他にもアジサイなど色々見られました。樹林下の渓流歩きと云う ”涼” を満喫できた夏の金剛山でした。