鹿華苑さんで見た春の木本たちです。

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 ヨシノツツジ(吉野躑躅)。ツツジ科ツツジ属の落葉樹で、シャクナゲとツツジの交配種です。別名を「西洋シャクナゲ “吉野”」とも云います。シャクナゲもツツジ科ツツジ属なので分類的には全く同じです。本来のシャクナゲよりも小さな花を咲かせます。開花時には樹木全体を覆い尽くすほど、花つきの良い、存在感抜群のよく目立つ花です。ヨシノツツジは、2002年の園芸博覧会(フロリアード)で金賞を受賞した植物です。

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 小輪系のシャクナゲで、一斉に咲きますので、花の時期は全体が紅色に染まります。

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 セイヨウシャクナゲ(西洋石楠花)。ツツジ科ツツジ属の常緑樹。ヒマラヤが原産地ですが、ヨーロッパで育成改良が進み、色々な園芸品種が作り出されました。日本には1930年代に持ち込まれました。日本の石楠花より、花が大きく、花色もカラフルで品種も多いところが違います。日本のホンシャクナゲはまだ開花していませんでした。

Sidekobusi

 今まで自生種のシデコブシ(国の準絶滅危惧NTに指定、天然記念物)を見たことがないので、確信出来ないのですが、花びらの数が15枚見えますので、栽培品の シデコブシ(四手辛夷)で間違いないでしょう。コブシやモクレンなどの仲間は、花の作りが3の倍数になっています。3の倍数になっているのは普通、単子葉植物で、ユリやアヤメ、ツユクサなども3の倍数です。これらは植物学的には古い植物なんだそうで、モクレンなんかも1億年以上も前の化石も発見されているそうです。ただ3の倍数というのは基本ですので、すべてがそうであるとは言えません。シデコブシの自生地である岐阜県の「岐阜県森林研究報・31(2002)」に、シデコブシ・コブシ・タムシバ3種の花弁数・花弁幅・花弁長についての研究調査結果が出ていますが、コブシとタムシバは平均花弁数は6.1枚、シデコブシの平均花弁数は15.2枚との実証確認報告が出ています。

Benikobusi
 ベニコブシ(紅辛夷)。シデコブシの変種で、別名はヒメシデコブシ(姫四手辛夷)。萼片と花弁、合わせて十数枚が不規則に全開し、花弁には横に縮れた皺が入っています。

Kobusi

 タムシバ(田虫葉)。ご存知の通り、コブシとタムシバの相違点は、コブシが花の下に葉が一枚ついているのに対し、タムシバは花の下に葉がありません。

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 ミツマタ(三椏)。ガンピやコウゾと並んで、和紙の原料として広く知られる植物です。ミツマタを原料とした日本の紙幣は、その優秀性を世界に誇っています。

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 トサミズキ(土佐水木)。どこでもよく見かけますが、自生地は土佐(高知県)だけです。

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 ヒメミズキ/ヒュウガミズキ(日向水木)。トサミズキは7-8個の穂状花序ですが、こちらは、2-3個の花序です。トサミズキに対して小さいので、ヒメミズキとも呼ばれます。明智日向守光秀の所領地(京都の丹波)で発見されたので、「ヒュウガ」の名前が付いたとも云われていて、北陸から近畿の日本海側や四国が自生地です。宮崎の日向とは関係ありませんが、近年には宮崎でも自生種が発見されたようです。

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 サンシュユ、レンギョウ、ハナズオウなどの花も咲いていましたが、最後は私の大好きなツバキ(椿)です。晩冬から楽しませてくれた椿もそろそろ見納めです。佗助としては、やや大柄のピンクの花が美しい カガワビスケ(加賀佗助) です。

Gakkou

 紅色系・唐子(からこ)咲きの ガッコウ(月光)。椿の中でも「月光と日光」は、とりわけ個人的に惹かれるツバキです。唐子咲きとは、写真のように花芯のオシベすべてが小さな花弁に変化した椿です。濃緑の葉、真っ赤な花びら、白い花芯(日光は赤い花芯)のシンプルな組合せは、まさに椿の神髄とも云えます。