池や湿原、水田などで出会った湿性あるいは水生の植物たちです。
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キセルアザミ(煙管薊)。キク科アザミ属の多年草。アザミの仲間は地域限定型が多いのですが、キセルアザミは、本州以南の湿原や湿り気のある場所で広範囲に見られる 広域型のアザミです。花期は9-10月で、1つの茎に沢山の花を咲かせることは少なく、通常は1つか2つ程度です。
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花は横向き ないし下向きに咲き、その状況を喫煙具の煙管(キセル)に見立てたのが名前の由来です。花が咲き終わった後は上向きになって、綿毛(冠毛)の付いた種子を作り、風に乗って飛んでいきます。全国10都県でRDBに登録されていますが、近畿地方ではすべて無指定です。
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ホテイアオイ(布袋葵)。ミズアオイ科ホテイアオイ属の多年草。南アメリカ原産で、全国の温暖地で野生化しています。夏に、6つの花被をもつ淡青紫色の花を咲かせます。
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奈良県橿原市の本薬師寺(もとやくしじ)跡周辺の休耕田では毎年1万5千株ほどのホテイアオイが見られるので楽しみにしていたのですが、今年はコロナ騒動で中止となりました。本薬師寺跡周辺のホテイソウは → こちら
写真のホテイアオイは拙宅で咲いたものです。昔はプランター2つに水を張ってメダカの産卵用浮草として育てていて、夏には次々と爽やかな花を咲かせてくれていたのですが、背丈が高いこと、繁殖力が強いことで全部破棄し、メダカの産卵用水草は小さなミニ・ホテイソウに入れ替えました。ところがミニは、どうも花が咲くことがなく、今はスポンジの人工産卵床も出たので、ミニホテイソウも処分しました。花を見るために、再び昨年からホテイソウをバケツで育てはじめ、この夏は6個の花を次々と咲かせてくれました。
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ヒシ(菱)。ミソハギ科ヒシ属の一年草。全国の池や沼に生えます。葉は互生、三角状の菱形で水面に放射状に広がります。上部の葉縁に三角状のぎざぎざがあります。花期は7-9月、葉のわきから伸びた花柄が水面に顔を出して、花径約1cmの白い花を咲かせます。
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ハゴロモモ(羽衣藻)。ハゴロモモ科ハゴロモモ属の多年生水草。北米原産で、日本には昭和4年(1929)に東京・小石川植物園が導入。以後 野生化し、全国各地の池や湖沼に分布しています。
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花期は7-10月で、水上に花茎を出し、直径1.0-2.5cmほどの白い花を咲かせます。一日花です。個人的には、
藻の花の中では、バイカモやタヌキモ同様に好きな花です。葉には浮葉と沈水葉の2タイプがあり、浮葉は、写真に見えますようにジュンサイのように全縁で楕円形ですが‥
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沈水葉(水中葉)は、茎に房状に付き、糸状に細裂して、とても美しい藻です。アクアリウムの世界では、グリーン・カボンバの名称で用いられ、フサジュンサイ(房蓴菜)あるいはキンギョモ(金魚藻)の別名もあります。
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イボクサ(疣草)。ツユクサ科イボクサ属の一年草。全国の湿地や水田に生えます。水田雑草扱いですが、葉も花もスッキリしていてとても可愛いです。
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オモダカ(沢瀉)。オモダカ科オモダカ属の多年草。全国の水田や用水路に見られる水田雑草です。花期は8-10月で、雌雄同株で総状花序の下方に雌花、上方に雄花をつけます。花弁は3枚で白色です。
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クサネム(草合歓)の果実。マメ科クサネム属の一年草。全国の水田に生える水田雑草です。今年は猛暑で花を見に行くこともなく、後刻、散策した時には、もう果実となっていました。
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カキツバタ(杜若)の種子。アヤメ科アヤメ属の多年草。黒変した熟果が裂開して赤い種子を見せていました。カキツバタの種子を見たのは初めてです。
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ミズトラノオ(水虎の尾)。シソ科ミズトラノオ属の多年草。東北地方南部以南の湿地や水田の跡地などに生えます。
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湿地に群生するミズトラノオ。花期は8-10月で、背丈は最大50cmになり、枝分かれはほとんどしません。花は淡い紫色で、穂状花序の下の花から順に開花します。
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ミズトラノオは、環境省カテゴリ:絶滅危惧Ⅱ類(VU)で、全国30都府県でRDBに登録されています。近畿地方では‥大阪府:絶滅、京都府:絶滅危惧Ⅰ類、兵庫県・滋賀県・三重県:絶滅危惧Ⅱ類 となっています。
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ミズオオバコ(水大葉子)。トチカガミ科ミズオオバコ属の一年草。全国の溜池・水路・水田などに生える沈水植物。当地ではもう見られず絶滅状態なので、自生地で知っている場所の最も近くの所に出向いてみたのですが、水場には水生雑草が生い茂り、花が見られません。ここも絶滅かと、必死になって探していたら、草陰の中に一輪の花が見えました。
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ミズオオバコは、環境省カテゴリ:絶滅危惧Ⅱ類(VU)で、全国42都府県でRDBに登録されている超希少種です。近畿地方では‥京都府・三重県:絶滅危惧Ⅱ類、大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県:準絶滅危惧種、滋賀県:その他重要種 となっています。たった一輪だけの再会は、嬉しさよりも、来年はどうなるのかの不安が大でした。