早いものでお盆も終わり、聞こえてくるセミの声も、ヒグラシやツクツクホウシが殆どで、秋も間近かです。しかし暑さは相変わらずで、外出は滞りがちです。数少ない里山歩きで撮り溜めた「夏の昆虫たち」の臨時投稿です。
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ミヤマクワガタ(深山鍬形)のオス。クワガタムシ科ミヤマクワガタ属の甲虫の一種。和名の「深山」とは山奥の意味で、この言葉が示すように、ミヤマクワガタは冷涼湿潤な環境を好むため標高の高い山間部でよく見られます。低地で温暖湿潤な環境を好むノコギリクワガタとは対照的です。
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ミヤマクワガタは、頭部に冠状の突起「(頭部)耳状突起」があるのが最大の特徴です。また、クワガタムシの大型種は夜行性であるものが多いですが、ミヤマクワガタは昼間にも活動している姿が見られます。ミヤマクワガタは、全国6県でRDBに登録されていますが、近畿地方では無指定です。
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ノコギリクワガタ(鋸鍬形)のオス。クワガタムシ科ノコギリクワガタ属の甲虫の一種。ペアでいたのですが、樹木の隙間に逃げられてしまい、せめて大きな顎の姿を撮りたくて、引っ張り出そうとしたのですが、これ以上 力づくで引き出すと虫の方が傷つくので諦めました。
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ノコギリクワガタのメス。別の場所で出会ったノコギリクワガタのメスです。
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コクワガタ(小鍬形)のメス。クワガタムシ科オオクワガタ属の甲虫の一種。全国の雑木林や里山に生息します。最も身近に見られるクワガタムシですが、残念ながらオスとは出会えずでした。
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カナブン(金蚉、金亀虫、金蚊)。コガネムシ科カナブン属の甲虫の一種。本州以南の低地から山地まで広く生息します。コガネムシより少し大型で、体長は2.5cmほどあります。 銅色や緑色のカナブンが一般的ですが、稀に紫や青や黒いカナブンもいます。カナブンとコガネムシはよく似ていますが、見分けるポイントは、頭の形と背中の三角形です。カナブンの頭は四角く、背中の翅の付け根に逆三角形があります。体つきもやや四角い形をしています。また、カナブンの主食は樹液ですが、コガネムシは植物の葉や根を食べる害虫となっています。
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ルリセンチコガネ(瑠璃雪隠黄金虫)。センチコガネ科オオセンチコガネ属の甲虫の一種。主に紀伊半島の和歌山県・奈良県・三重県に生息します。糞や腐肉を餌にするいわゆる糞虫の一群。センチコガネには、前翅に縦のすじがある種類が多く、体色も金属光沢があるのが普通ですが、種類や地域個体群によって紫、緑、瑠璃色、藍色、金色など色々な体色があります。
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クマゼミ(熊蟬)。セミ科クマゼミ属のセミの一種。日本特産種。黒っぽい体に透明の翅を持つ日本最大級のセミで、成虫の体長は60-70mmほどあります。西日本・南日本に多く、都心部の公園や街路樹でも普通に見られ、シャンシャンシャンと大きな声で鳴きます。地球温暖化のせいで、最近は関東地方などにも分布を広げています。
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鳴く時間帯は、太陽が照って温度が上がる午前7時頃から午前10時頃までが最も盛んに鳴き、猛暑日の炎天下では(=午後には)鳴きません。涼しくなった夕方に鳴くこともあります。
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脱皮中のクマゼミ。夕方から地上に這い出てきた幼虫は、近くの木や大きな草、あるいはブロック塀などに登り、安全な場所で脱皮をはじめます。
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羽化したクマゼミ。夜の10時頃には脱皮が終わり、そのまま一晩かけて翅を乾かし、翌朝に飛び立っていきます。
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アブラゼミ(油蟬)。セミ科アブラゼミ属のセミの一種。全国の人里から山地まで幅広く生息しています。鳴き声は「ジージリジリジリ…」と鳴き続け、最後は「ジジジジジー…」と尻すぼみで鳴き終わります。この鳴き声は昼下がりの暑さを増幅するような響きがあり「油で揚げるような」という形容で使われることが多く「アブラゼミ」という和名もこれに由来します。
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アブラゼミは、日本では最も普通に見られるセミですが、このように翅が不透明のセミは、世界的には珍しいセミなんだそうです
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羽化したアブラゼミ。早朝にブロック塀で羽化していました。
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ツクツクホウシ(つくつく法師)。セミ科ツクツクホウシ属のセミの一種。全国の薄暗い森林や低山帯に多く生息します。体長は3cmほど、翅の先端までの長さは4.5cmほどで、細長くてスマートな体型です。体色は頭から前胸にかけて暗黄緑地に黒斑があり、翅は透明で前翅に黒っぽい斑紋があります。ツクツクホウシは、警戒心が強く動きも素早くて仲々いい写真が撮れません。1日中鳴いていますが、夕方頃が一番鳴き声が大きいです。昼過ぎの頃は樹陰で休息していることが多いので、その頃を狙って撮った写真です。
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ヒグラシ(日暮)。セミ科ヒグラシ属のセミの一種。全国の主として山地の樹林に生息します。鳴く時間帯は、基本的に朝と夕方で「カナカナカナ‥」と云う哀愁のある鳴き声で、夏の終りを告げているような気がします。ヒグラシは日中の休息時には、薄暗い樹林の木の根元近くの涼しい場所に止まっていることが多く、山道を歩いていると(人間の足音を聞きつけて)急に足元からヒグラシが飛び立ち、ビックリすることがあります。
★今回のおまけは、私の大好きな昆虫界の名ハンター・シオヤアブです。
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シオヤアブ(塩屋虻)のオス
。ムシヒキアブ科の一種。全国の里山などに生息します。全身に黄色の毛が生えており、獲物をしっかり捕まえるため、足の棘も凄いです。オスには腹部後端に白い毛の束があります(写真〇印)
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シオヤアブのメス。日本で一番強い昆虫は何か?カブトムシ、オオスズメバチ、オオカマキリ、オニヤンマ、シオヤアブなどの名前があげられますが、総合的には、シオヤアブが日本の昆虫の中では最強とも云われます。飛翔する獲物を見つけると、背後から狙いを定めて一瞬で襲い掛かり、針の様に鋭く硬くなった口吻(こうふん)で獲物の神経節を切断し即死させ、そのまま体液を吸い取るというものです。まるで一撃必殺を極めた暗殺者のような狩りは、他の追随を許しません。
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交尾中のシオヤアブ。シオヤアブは、スズメバチのように人間を襲うことは滅多にありません。幼虫時代には土の中で農作物や園芸植物に被害を与えるコガネムシの幼虫を捕食し、成虫になってからもコガネムシをはじめ色々な害虫たちを退治してくれる 人間にとっては益虫であること、スズメバチをも捕食の対象にしていることなども、最強の名ハンターとして相応(ふさわ)しく思う次第です。