うだるように暑かった夏。うるさかった蝉の鳴き声も収まり、秋めいてきました。この時期に出会った蝶です。
ジャノメチョウ(蛇の目蝶)。タテハチョウ科ジャノメチョウ属の蝶の一種。全国で見られますが、都市部では見ることは少ないです。年1回だけ発生し、夏から秋にかけて見られる大型の蝶です。翅表は黒褐色で、前翅には大きな紋が2個、後翅には1個ないし2個の小さな紋が入ります。ジャノメチョウ属の蝶は、翅に丸い紋(眼状紋)があり、これをヘビ(蛇)の目に見立てたのが名前の由来です。 イネ科やカヤツリグサ科の植物が幼虫の食草なので、野原(草むら)で多く見られます。フワフワと低い位置で優雅に飛びますが、草むらの中で休むことが多いので写真に撮りづらい蝶でもあります。丁度、いい具合に草むらから出て来て、木の切り株の所で日光浴をし始めました。
ジャノメチョウの翅裏模様。翅裏には白い帯が見られる個体も多いです。ジャノメチョウ属の蝶は総じて暗い場所を好むので、そのためか翅色も地味なものが殆どで、鮮やかな色合いの蝶はいません。そんな中で、ジャノメチョウは(食草との関係か)河原や河川の堤防、林縁など比較的明るいところを好みます。
交尾中のヒメウラナミジャノメ(姫裏波蛇目)。タテハチョウ科ウラナミジャノメ属の蝶の一種。翅裏には大きな金環の付いた蛇の目模様が、前翅に1個、後翅に5個あります(稀に6個以上あるものもいます)。
ヒカゲチョウ(日陰蝶)。タテハチョウ科ヒカゲチョウ属の蝶の一種。日本固有種。本州以南の山地に生息します。名前の通り、陽光を避けて、曇天や夕刻などに日陰(ヒカゲ)でよく飛びまわるのが名前の由来です。ヒカゲチョウ属も翅に丸い紋(眼状紋)があります。以前はジャノメチョウ科として独立していたのですが、分類の見直しでジャノメチョウ科は、タテハチョウ科ジャノメチョウ亜科となり、ジャノメチョウ属やヒカゲチョウ属などに細分化されてしまいました。
アカタテハ(赤立羽)。タテハチョウ科アカタテハ属の蝶の一種。翅表の前翅の先端は黒く、白色の斑点が点在します。前翅の表側に鮮やかな橙色の帯模様があり、名前はこれに由来しています。
アカタテハの翅裏は、ほぼ灰褐色で、白くて細い網目模様があります。
ジャコウアゲハ(麝香揚羽)のオス。アゲハチョウ科ジャコウアゲハ属の蝶の一種。東北以南の河原や野原など、食草のウマノスズクサが生育する明るい場所で見られます。この蝶も、ゆっくりフンワリと飛ぶのが特徴です。他のアゲハチョウに比べ、後翅が後方に細長く伸びています。雄の翅は黒っぽく、雌の翅は白っぽいのが特徴なので、写真はオスです。
クロアゲハ(黒揚羽)。後翅にオレンジ色の斑が見られるので、メスでしょう。
キアゲハ(黄揚羽)。アゲハチョウ科アゲハチョウ属の蝶の一種。写真がよくなく、翅が黄色く見えないのですが、キアゲハの前翅の付け根は黒くなっていますが、ナミアゲハ(次項)は前翅の付け根が白黒の縞模様なので、見分けられます。
ナミアゲハ(並揚羽)。アゲハチョウ科アゲハチョウ属の蝶の一種。全国の人里周辺で普通に見られます。翅は黒地に黄白色の斑紋や線が多数入り、さらに後翅には水色や橙色の斑紋もあります。
ナミアゲハは、単にアゲハとかアゲハチョウと呼ぶこともありますが、これらの呼び方は、他のアゲハチョウ亜科のチョウとの混称や総称として使われることも多いので、この品種のみを指すにはナミアゲハと呼ぶ方が間違いないです。
ナミアゲハの幼虫:左が3齢幼虫、右が4齢幼虫 かな。4齢幼虫になるまでは鳥の糞に擬態していますが、4齢幼虫になるとツノも出て来て、身体も緑色を帯びてきます。このあと5齢幼虫となり蛹化し、10-15日ぐらいで羽化します。幼虫の食草はミカン科の植物ですので、柑橘類や山椒などの木で幼虫を見かけることが多いです。
ウラギンシジミ(裏銀小灰蝶)。シジミチョウ科ウラギンシジミ属の蝶の一種。本州以南に生息します。翅の裏が銀白色なのが名前の由来です。この蝶はタテハチョウ科と思えるほど翅を立てていることが多く、仲々翅を広げてくれません。ちなみに翅を広げた翅表の色は茶色で、オスはオレンジ色の班紋、メスは白色の班紋があります。
メスグロヒョウモン(雌黒豹紋)のオス。タテハチョウ科メスグロヒョウモン属の蝶の一種。全国の丘陵地や低山地で見られます。暑い夏場は夏眠していますので、見られる時期は初夏と秋に限られ、特に秋によく見られます。
オスの翅裏です。
メスグロヒョウモンのメス。今年はまだメスの写真が撮れず、以前に撮ったメスの写真です。オスはヒョウモン(豹紋)模様の黄色い翅色ですが、メスの翅色は黒地に白帯模様と全く異なっています。メスとオスの翅色の違いが、そのまま名前の由来(メスグロ・ヒョウモン)となっています。 メスの翅裏です。
ルリタテハ(瑠璃立羽)の終齢幼虫。タテハチョウ科ルリタテハ属の蝶の一種。終齢幼虫は地色が黄色からオレンジ色に、トゲは白色で先端は黒色に、見るからにケバイ姿に変身しますが、触っても痛くなく無毒なので、慣れれば可愛いものです。
蛹になる直前には、ホトトギス(食草)から離れて移動してしまい、どこへ行ったか分からないことが殆どですが、今年はホトトギスの茎で3匹が蛹になってぶら下がっていました。まぁどこに行こうが、元気に蝶になってくれさえすれば、それで良しです。大好きなルリタテハの6年前に行った飼育観察記①は→こちら、飼育観察記②は→こちら をご覧ください。
今回のおまけは、蛾(ガ)と蝉(セミ)です。
ハグルマトモエ( 歯車巴)。ヤガ科トモエガ属の蛾の一種。本州以南の平地から山地まで広く分布しています。巴紋の様な渦巻き模様を翅に持つ大型の蛾です。オスグロトモエと大変よく似ており、混同されがちですが‥
「二本の条線が翅の縁に向かって平行なのがオスグロトモエ。翅の縁に向かってやや広がっているのがハグルマトモエである」と云う見分け方の記事に出会って、ハグルマトモエとしました。
ミンミンゼミ(ミンミン蟬)。セミの一種。鳴き声だけはよく聞こえても、仲々姿を見せてくれない蝉ですが、暑かった夏の最後の記念に1枚だけ撮らせてくれました。ミィ~ン、ミンミンミンミン、ミィ~ン‥‥Goodby!

コメント
コメント一覧 (4)
沢山の蝶の写真と解説、ウハウハで拝見しました。ジャノメチョウやヒカゲチョウの幼虫は可愛らしい耳のような角?のある姿で、ぜひ一度見てみたいと思いますがなかなか見つけられません。ルリタテハの生育日記、興味深く拝見しました。カッコいい成虫の姿からはかけ離れたトゲトゲ幼虫ですよね!私も庭にホトトギスを植えてみようと思いました😊ハグルマトモエとオスグロトモエ、微妙な差なんですね!私が見たのはどちらなのかな?グーグル検索で出たものをほぼ信じているので、もう一度、見てみようと思います。
コメント有難うございます。
ツマグロヒョウモンの飼育観察をキッカケに、いろいろな蝶に興味を持たれたようで、嬉しいです。蝶の越冬形態は、卵、幼虫、蛹、成虫と種によって様々ですが、ジャノメチョウは幼虫で越冬します。年一化性なので秋の産卵から幼虫になり、越冬して夏に羽化するまで相当長い期間を幼虫で過ごすようです。春から初夏頃に食草であるイネ科やカヤツリグサ科の草むらを探すと幼虫と出会えるかもしれませんね。ルリタテハは美しい翅表と汚れた枯葉色の翅裏とのギャップ、幼虫の姿など、大自然の中で生き抜くための知恵が盛り込まれているようで、不思議な魅力があり大好きです。ぜひホトトギスを植えて観察してみてください(花は楽しめませんが)。グーグル検索は必ずしも確実ではありませんが、調べる手がかりを与えてくれますので私も時々利用しています。
コメント有難うございます。
ジャノメチョウ亜科(ジャノメチョウやヒカゲチョウなど)の蝶は、みんな何某(なにがし)かの眼状紋がありますので、仰るように眼状紋の位置・大きさ・数をしっかり確認する必要がありますね(クロコノマチョウだけは紋が小さくて分かりにくいですが、その分特異な翅模様なので、すぐに分かりますが)。南方系のナガサキアゲハやイシガケチョウなどの北方進出も早まっているようですね。ただ、こちらでもナガサキアゲハは時たま出会う程度で、まだ数は多くないような気がしますので、出会うと嬉しいですね。