8-9月に出会った山野草たちです。
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キツネノカミソリ(狐の剃刀)。ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草。本州以南の人里に近い雑木林やその林縁など、余り日射しの強くない場所に生えます。早春に水仙に似た葉を展開し、この葉の形が日本剃刀(カミソリ)の刃に似ているのが名前の由来ですが、葉は初夏には枯れて姿を消します。その後、8月中旬(お盆)の頃に、地中から花茎だけを30-50cmほど伸ばして、先端で枝分かれした先に数個の朱赤色(橙色)の花を咲かせます。
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キツネノカミソリもヒガンバナも、どちらも花が咲く時には葉がありません。ヒガンバナは冬から春に葉を出し、キツネノカミソリは春に葉を出し、初夏の頃には姿を消します。その後、キツネノカミソリはお盆の頃(晩夏)に花茎だけが伸びてきて花を咲かせ、ヒガンバナはお彼岸の頃(初秋)に花茎が伸びてきて花だけを咲かせます。どちらもご先祖様を弔う時期に、花を咲かせると云うのも不思議な取り合わせです。
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しかも両者ともに有毒植物で、よく似た習性をもっていますが、キツネノカミソリが彼岸花と違うところは、花の色(橙色)と花の形(6弁花)が違うことと、葉や花を出す時期が微妙に異なることです。
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花期でのキツネノカミソリの蕾の出現。
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キツネノカミソリの開花当初。
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キツネノカミソリは、全国8都県でRDBに登録されており、近畿地方では‥和歌山県:絶滅危惧Ⅱ類 となっています。
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アキノタムラソウ(秋の田村草)。シソ科アキギリ属の多年草。本州以南の山野の道傍などに生えます。花期は7-11月と長きに渡ります。茎の上部に10-25cmほどの長い花穂を付け、紫色〜青紫色の唇形の花を咲かせます。和名の田村草の由来は分かっていません。
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アキノノゲシ(秋の野芥子)。キク科アキノノゲシ属の一年草ないしないし越年草。全国の日当たりの良い場所に生えます。花期は8-12月で、花は舌状花だけで、花色は淡い黄色(クリーム色)で、朝に咲いて夕方には閉じる一日花です。
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アキノノゲシは、背丈が1mを越える大型の草本ですが、花は控えめな美しさを感じさせてくれる秋の野草です。
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ノアズキ(野小豆)
。マメ科アズキ属のツル性多年草。花期は8-9月で、花は黄色の変わった蝶形花で、旗弁は右側が大きく、竜骨弁はクルリと曲がって左側の翼弁と一緒に上向きになっています。ノアズキの花とよく似ているものにヤブツルアズキがありますが、花の中央の竜骨弁が綺麗に見えるのがノアズキで、竜骨弁の上方が左の翼弁に隠れているのがヤブツルアズキです。
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まだ果実は見られませんでしたが、ノアズキの豆果は、サヤエンドウのような扁平な実で、ヤブツルアズキの円筒形の実とは見た目も違います。豆果から察しても、アズキの原種はヤブツルアズキです。ノアズキは葉っぱの形もヒメクズ(姫葛)の別名通り菱形です。ノアズキは全国9都県でRDBに登録されていますが、近畿地地方では無指定です。
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キツネノマゴ(狐の孫)。キツネノマゴ科キツネノマゴ属の一年草。本州以南のやや湿った畦や草むらに生えます。花期は8-10月で、枝の先に穂状の花序をつけ、紅色(赤色)の唇形の花をつけます。
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シロバナキツネノマゴ(白花狐の孫)キツネノマゴの白花変種です。キツネノマゴは、花が終わる頃には長く成長した穂が「狐の尻尾」のように見えるのですが、なぜ狐の尻尾とはいわず狐の孫なのかはよく分かりません。
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ゲンノショウコ(現の証拠)紅花
。前記のキツネノマゴに引き続いて「紅花(赤花)・白花シリーズ」で、ゲンノショウコを取り上げました。ゲンノショウコの紅花は西日本に、白花は東日本に多いと云われており、当地でも8-9割が紅花です。ゲンノショウコは昔から、花よりも民間薬として親しまれてきました。幾つかの薬効の中でも、特に下痢にこれを服用すると、ただちに効果を現すので「現の証拠」と呼ばれました。
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ゲンノショウコ白花
。東日本と西日本の中間地である中部地区では、紅花・白花とも同じ割合で見られます。私も上高地等の寒冷地でもほぼ同じ比率で見ていますので、気候環境(寒暖の違い)が花色に影響を与えているとは思えません(実際そのような見解も見当たりません)。なのに、東は白花、西は紅花が多いのは何故でしょう?
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これは紅花それとも白花?  花色の東西の差については、唯一、某社図鑑の解説に 「東日本では紅花の方が薬効が高いとされ、西日本ではその逆だったため、花色の地域差ができた」 と書かれています。つまり、もともと東には白花が、西には紅花が幾分多かったようで、民間薬として採取される際、その地で少数派の花色のものの方が薬効があると信じられ採取されたため、少数派の花色のものは益々減少していったらしいのです。ちなみに現代の科学的見解では、薬効は紅花でも白花でも全く差はないそうです。